「…どこ?」
出入り口らしい扉は
ないけれど。
「ココだよ」
セイが私の後ろから
腕を突き出して
押入れの天井を押し上げた。
「あッ」
すごおおおおおい!
私は思わず
押し入れの中に入り込んで
天井に開いた通路を覗いた。
「母屋の方から
続いてたみたいだから。
当時のここの当主が
この通路を伝ってきて
奥方にナイショで
女中部屋に
忍び込んでいたのかもね」
説明するだけ説明して
「もういいだろ」って
笑いながら
セイが
私のカラダを押し入れから
引っ張り出そうとする。
…何か怪しいッ。
「ほら、出ろよ」
「まだ、もうちょっと
探索するんだからッ」
「いい加減にしろよ。
もう夜中だぞ」
セイが私の腰を
掴んで離さない。
あのセイが
世間一般の常識なんぞ
持ち出してくるトコロが
ますます怪しいッ。
「まさかカノンくんとか
後学の為とか言って
どこかに隠れているんじゃ
ないでしょうねッ」
「んなワケないだろッ」
「じゃ、カノンくんは今
どこで何をしてるのよッ」
あんなに
嫉妬心剥き出しだった
カノンくんが
「やすやすとセイを
夜這いに行かせるとは
思えないからッ」