…先が丸いとはいえ

そのナイフを私が奪って

私がここから
逃げ出そうとするとか

そういう発想は
ないのだろうか。


「亡くなられた奥さまが
カステイラのお好きな方でね」

タマゴが入っているから
陰膳でお供えして

お下げしてきたモノだという。


「たくさんの方が
持ってきてくださったので

困っていたトコロなので
食べるの
手伝ってください」


…あんなに厳しそうな顔で
写真に写っていたのに。


亡くなったときに
好物をみんなが
手に手に持ってくるなんて


「亡くなられた
おばあさまって

随分とみなさんから
慕われていた方
だったんですね」


何だか意外だった。


「ボランティアや
社会貢献に
熱心な方でしたから」


家族には厳しくても

他人には
限りなく献身的だったという

セイのおばあさま。


「単なる変わり者でしょ」

その声に振り向くと

押し入れの中から
カノンくんが出てきて。


「ずっとその中で
話を聴いていたのッ!?」


ビックリしたッ。


…と、言うコトは

この拉致もどきに
カノンくんも関わっていたと
言うコト…だよね?


「こんな中で
息を潜めて
話を聴く必要なんて
どこにあるんですか?」

よく考えてから発言しろと
言わんばかりの
カノンくんは

やっぱり
セイの従弟だけあるッ。


…かわいくないッ。