「なら、どうして
そんなトコロに
隠れていたのかなッ?」


「トーコさんだって
この部屋には
この隠し通路から
入ってきたんですけどねッ」


カノンくんか
押し入れのフスマを
おおきく開けて

奥の隠し階段を見せる。


…忍者屋敷かッ。


「誰にも見つからずに
ここまで来れるから

いつも重宝
させて貰ってます」


そう言って
押入れを乱暴に閉めると

カノンくんは
私の目の前にあった
カステイラに手を伸ばした。


「あッ」


「何です?

ひと切れくらい
いいじゃないですか」


「カステイラのコト
じゃなくて

カノンくんの指ッ!!」


ちいさな引っかき傷が
ひとつ。


「私の口を塞いで
アタマに袋を被せたの

カトーさんじゃなくて
カノンくんだったんだッ!」


「…カトーさん。

自分が拉致したとか
言ったの?」


「…いや、まあ、ね」

カノンくんに突っ込まれ

カトーさんの顔に
困惑の色が浮かぶ。


「弁護士のカトーさんが
そんなヤバいコトやったら
さすがにマズイでしょ」


って。

カノンくんッ。

アンタがやっても
マズイでしょおおおおおッ。


「しっかし
ツメを噛むクセでも
あるんですか?

深爪派かと思ったら
先がギザギザだし」


…セイがときどき
噛んじゃってるとは

さすがに言えないッ。


「…あの、セイは?」

「読書中ですよ」


はあッ!?