「ビデオがあるから
それでもかけたら
どうですか?」

カノンくんが

ラベルに
数字しか書いていない
ビデオテープを何本か

本の山の中から
掘り出しているけれど…。


ひとり者のオトコの部屋。


…まさか
エッチなビデオとかじゃ
ないよねッ。


「…何のビデオかなッ」

「そんなの、知りませんよ」


危険すぎるううううう。


「…やっぱ
ビデオもいいや」

「そうですか?」


「……」

「……」


…とはいえ。

やっぱり
気まずいッ。


気まず過ぎる。


…だいたい
カノンくんは

何でこの部屋に
居残っているんですかッ。


「その…。

やっぱり私のコト

カノンくんは
見張ってたりしてるワケ?」


「トイレなら
我慢してくださいね。

あと1時間もしないうちに
解放できると思いますから」


…誰も
トイレの話なんか
しとらんだろッ。


「ああ、それから」


トーコさんは
お土産を買いに行くという
名目で

「実は急に生理が始まったから
ナプキンを買いに
言ったんだって

セイ先輩には
伝えてありますから」


口裏を合わせて
くださいね、って。


何じゃ、そりゃああああ。