…ここで
結婚の二文字を
口に出したりしたら
きっと
それこそ
遺産目当ての結婚だと
思われてしまうだろうか。
「……」
私とセイが
ここにきたのだって
お葬式の出席が
目的ではなくて
恐らく遺産のコトで
ゴネにきたんだと
解釈されていて。
…たぶん
私は信用されてない。
そう思い知らされた。
だから
カノンくんは
セイが帰らないよう
私に
協力を求めるコトをせず
拉致、軟禁なんて
手荒なマネを
選んだのだろう。
「……」
「…どうしたんです?
急に黙り込んだりして」
「…こんなトコロで
私なんかと
ふたりきりでいるトコを
カノンくんのお母さんに
見つかったら
大変な騒ぎに
なるんじゃないの?」
「母はオトコの部屋を
訪ねてきたりするヒトじゃ
ありません」
…まるで
私に
貞操観念がないみたいに
聴こえますけどッ。
「祖母がそれはそれは
厳しいヒトでしたから」
カノンくんが
目を伏せる。
「…カノンに
どういう躾を
しているんだいッ。
本当に
おまえのちいさい頃に
そっくりで
見てられないわッ」
突然
カノンくんが
手振りをつけながら
おばあさまの
モノマネをし出して。
「……」
驚いたッ。