…こんな遠くまで
おばあさまに
お別れをしにきたというのに
肝心の
遺体も遺骨もない上に
遺産相続で
あらぬ疑念を抱かれて。
セイが
荒れ狂いたくなる
気持ちは
よくわかってた。
それでも。
「…もうケンカは
やめようよ」
私達
子どもじゃないんだし。
こんなの
お互い
傷つけあうばっかりで。
よくないよ。
私は
座布団から覗いていた
セイのアタマを
そっと撫でた。
「トーコさん
どうしたんですか!?」
用事を終えて戻ってきた
カトーさんが
部屋の惨状を見て
蒼ざめている。
当然だ。
窓が開いて
部屋の中が水浸し。
カステラは
畳にこびりついていて
その上
私はびしょ濡れで…。
しかも。
「そこに倒れているのは
もしかして…」
カトーさんが
セイに被せてあった座布団を
恐る恐る取り除いた。
「セイさまッ!?」
どういうコトなんですか、って
言われても
何をどう説明すれば
いいんだろう。