いつもの姉弟ゲンカなら
ママかパパが
うまく取り成してきて
くれていた。
「…カトーさんさあ。
トーコを人質に取るなんて
やり方があまりにも
幼稚で短絡的じゃない?」
セイが
うつ伏せになったまま
身動きもせず
カトーさんを責めている。
「…それは…!」
カトーさんが
しゃべっちゃったんですか
と言わんばかりに
私を見て溜息をついた。
「…トーコさん。
おかえりなさい」
もう帰ってきたんですか、って
カノンくんが
いつのまにか部屋に
戻ってきていて。
「雨に濡れたんですね?
戻る部屋を
間違えちゃったのかな?」
なんて
白々しく演技を続けてる。
「お風呂の用意をしますから
取りあえず
お部屋に戻りましょう」
私の腕を掴まえて
廊下に連れ出そうとする
カノンくんの視界には
セイの姿も
入っているハズだ。
「あのね、カノンくん。
もうセイには…!」
「セイ先輩。
トーコさんの声でも聴いて
窓から
入ってきたんですか?」
私のセリフを遮って
カノンくんは
ゆっくりと
セイの方を振り返った。
「トーコさんも
買い物がしたいって
出かけたのかと思ったら
こんなトコロに
いるなんて
何してたんですか?」
「……」
カノンくんは
あくまでも
シラを
切り通すつもりなんだ。
だけど。
セイは3人の会話を
コタツの中から
全て聴いてしまっている。