これ以上
カノンくんに無駄な芝居を
重ねさせたら
ますます
セイに不信感を募らせる
結果になるだろう。
ここは
出来心で、と
どうしても
ここに留まって
欲しかったから、って
素直に伝えれば
セイだって
少しは納得してくれるかも
しれなかった。
「カノンくん、実はね…」
私は
カノンくん達に
コタツのネタばらしを
しようとして
「あのさー」
セイに阻まれる。
「その言い方だと
トーコがウソつきで
非常識な人間みたいに
聴こえるよね」
「とんでもないですよ。
おおきな屋敷だから
トーコさんは
玄関がどこかわからなくて
困っていたんでしょう?」
「……」
「さあ、トーコさん」
…どうしてセイは
言い返さないんだろう。
コタツの中で
全部聴いていたんだって
何故カノンくん達を
責めないのか。
…セイが
黙ってるんだったら
私も言わないけれど。
私は
カノンくんに連れられて
カトーさんの
タバコ臭い部屋を
後にした。
「…セイにウソとか
つかない方が
いいと思うんだけど」
私は前を歩いている
カノンくんの背中に
声を掛ける。
「トーコさんは
事情も知らないくせに
他人の家のコトに
口を出すのは
やめて貰えますか?」
って。
私はこの家では
確かに赤の他人かも
しんないけれどッ。
「今回の一件では
思いっきり
当事者なんですけどねッ」