「大袈裟な言い方
するヒトですね」
くぬぬぬぬうううううッ。
コ生意気な中学生ッ。
アンタこそ
家の事情なんぞ
どこまで
知っているんだかッ。
「風呂場はここです」
荷物はカバンごと
女中に脱衣場まで
運ばせておきますから、って
私を置いて
さっさと
行ってしまおうとしていた
カノンくんの背中を
思わず掴んだ。
「女風呂って
書いてますけどッ」
ここは旅館ですかッ。
「従業員用だから
遠慮なく使ってください」
「…従業員用、って」
「夕方の
シフト交代の時間まで
たぶん誰も
利用しませんから
おおきな湯船を
貸し切り状態でどうぞ」
…それって。
おおきな湯船で
ゆったりと
くつろいでくださいって
コトなのか。
それとも
客人とは認めてないって
暗に
ほのめかして
いるのだろうか。
「アメニティー類なんかは
適当に使って貰っても
結構ですから」
…たぶん
後者の意味だろう。
女湯の暖簾の中を覗くと
ちいさな脱衣場には
籐のカゴが6個
置いてあって。
「少なくても
女性の従業員が
6人もいるってコトだよね」
ちょっとビックリだ。
私は濡れたブラウスを
入れるモノを探しに
さらに奥の湯殿へと
足を運んだ。