お風呂ちゃぷちゃぷ編
私の心配など
どこ吹く風で
セイは
背中を向けている私の髪を
濡れた手で櫛毛している。
「騒ぎになって
恥をかくのは
パパとママなんだからねッ」
「騒ぎになったら、の
話だろ?」
セイがのん気に
私の背中にキスをした。
「…セイが
出て行かないんなら
私が出て行くッ!」
私は右腕を
思いっきり伸ばして
湯桶を取ろうとする。
「出てくヒトは
こんなモノ必要ないだろ?」
セイに簡単に
取り上げられた。
「こんなモノで
カラダを隠しながら
どこへ行くワケ?
着ていたモノ全部
あのオバサンに
持っていかれてるんだろ?」
…そうだった。
洗濯するんだって
カノンくんのお母さんに
持っていかれたんだったッ。
しかも部屋に帰っても
荷物もない…。
「今、トーコの力に
なってやれるのは
この世に
ただひとりってワケだ!」
セイってば
楽しそおおおおに
笑っててッ。
…意地でも
頼りたくなくなってくるッ。
「ホント
あのオバサンも」
親切なフリして
困らせるのがお上手で、って
セイがふざけてみせた。
…考えたくはないけれど。
「やっぱり、そうなのかな…」
嫌がらせで
持っていかれ
ちゃったんだろうか。
「当たり前だろ〜。
あのオバサンに
俺達が気に入られているとでも
思ってたの?」