長い間
俺をばあさまに逢わせるのを
ずっと拒んでた人間だぜ、って


そんな風に
言われてしまうと。


…何か凄いショック。

自分の甘さが
情けなくなる。


「たぶんさ。

雨に濡れた女中、なんてのも
作り話だと思うけどね」


雨が降るとわかってるのに
地元の人間が
カサも持たずに外に出るなんて
あり得ないでしょ、って。


セイの推察は
おそらく正しくて。


「……」

「夜になるまで
ここで何時間も
ハダカで過ごすか?」


「……」


「トーコ?」


背中を向けたまま
返事をしようとしない
私の顔を

セイが覗き込んできだ。


「…何、泣いてるんだよッ」


だって。

「気に入らないのなら
ハッキリ態度で示せば
いいじゃない…!」


こういう陰湿なやり方って

あまりにも
オトナ気がなさ過ぎる。


「俺達が押し入れに
隠れていたときだってさ」


誰かが
押し入れにいると
わかってて

押入れを開けるでもなく

知らんフリを
決め込むワケでもなく


帯を
わざと引っ張ったりして。


「かなり露骨な

実にわかりやすい嫌がらせを
していたと

思うんだけどね」


トーコは
おめでたいヤツだ、って


セイが
泣いている私のアタマを
ぐりぐり、する。