「もっとも

死んだばあさまだって
手を焼いてた
みたいだったし」


トーコだけが
翻弄されてるワケじゃ
ないから


「自分のおバカさを
恨むんじゃない」


なんて。


…セイってば

それでも慰めているつもり
なんだろうか。



「…セイってさ。

亡くなられた
おばあさまのコト

覚えてるんだ?」


「う〜ん。
ほとんど覚えてない、かな」


…なのに

おばあさまが
手を焼いてたって

何を根拠に
言い切っちゃうのか。


「俺の父親が書いていた
小説の中に

ばあさまを
モデルにしていると思われる
エピソードが

たくさん出てきてる」


私のココロの中の
ツッコミを読んだかのように

セイがコトバを
補完する。


「俺が覚えている
ばあさまはね…」


いつだって
毅然としていて。

自分にも
ヒトにも厳しいヒトで。


「魚を料理するときだって
命を無駄にしてはいけない。

尊い命の犠牲から
少しでも多くのコトを
学びなさい、って」


まるで
解剖でもするかのように

魚の内臓を指さしては
その機能と役割を

幼いセイに教えていたと言う。


「…自分のカラダを
いかにも
献体しそうなタイプだね」


「かもな」


セイのちいさな溜息が
背中越しに聴こえてきた。