「…だったら外で待っててよッ」

「やだよ。
ここの廊下、寒いもん」


「……」

「何ならトーコが
男湯に来る?」


って。


「あり得ないからッ」

威勢良く反論しても

真っ赤になってしまってて
顔を上げられない自分が
情けないッ。


自分のハダカを
見られるよりも

セイのハダカを
見る方が


数倍も
数十倍も

ドキドキが止まらない。


「ほら、俺に洗わせる気か?」

「冷たッ」


セイが俯いていた
私のアタマに

シャンプーを垂らして。


湯船の表面が
おおきく波打って

ザザーっと
お湯が溢れてゆく。


セイが
湯船に浸かったのだと
すぐにわかった。


「???」


いつもなら

即、くっついてきそうな
シチュエーションなのに。


私はそっと
セイの気配のする方を見た。


セイは私の方に
背を向けていて。

手を後ろにつくようにして
足を伸ばして座ってる。


「……」

チラリとでも
よからぬコトを
想像してしまったコトを

恥じいってしまうッ。


洗面器の中には
ちいさいけど
一応タオルも入ってて。


…セイも

これでも
気を遣ってくれて
いるんだよね。


混浴のお風呂だと思えば

恥ずかしさも
少しはマシかな。


私はセイの方を
チラチラと
目でけん制しながら

タオルを腰に巻きつけて


湯船の中で髪を泡立てた。


やわらかい甘い香り。

…セイの髪の匂いがする。