心臓の音を
誤魔化す為に
おおきな声を出してしまって
「な、何だよ。急にッ。
びっくりするだろうがッ」
セイが初めて
私の方を振り返った。
「あッ、いや。何。
背中の火傷の痕
随分薄くなったな、ってさ」
「…そんなコト
大声で話しかけるような
内容か?」
…その通りッ。
だけど。
何気ない
何でもない話なんか
急には思いつかなくてッ。
目に入ったコトを
つい話題に出してしまってた。
「ごめんなさい…」
「…おまえなあ。
何でもそうやって
深く考えもせず
すぐに謝っちゃうのな」
セイが苦笑してる。
「ノンポリシーっていうか。
短絡的だと言おうか」
「だって…!」
相手が不快に思ったのなら
謝るのは当然で…。
でも。
確かに
セイの言う通り
謝っちゃえば
済んじゃうって
どこか甘えたコトを
考えてしまっていたのも
本当で
「おまえのそういうトコ…」
直しますッ。
「俺すっごい好き」
え。
どえええええ!???
「おバカなトーコが
堪らなくかわいい」
ひええええええええ。
あまりに意外なセイの
セリフと
そのやわらかい微笑みに
思わず心臓が
どこかへ飛んでいったッ。
「トーコ、かわいい」
「アッ
アナグマみたいにッ!?」
「アナグマよりかわいい」