「自分の実の妹を
風呂場でレイプしようとして
溺死しかけたんだってさ」
「……」
なんてチンケな
アメリカンジョーク。
ハッキリ言って
「そういう冗談
笑えないからッ」
私の背中に
張りついていたセイの
頬っぺたを
思いっきり
引っ張ってやるッ。
なのに
「…ジョークなら笑えたさ」
なんて
セイは私の肩に
自分の額を擦り寄せてきた。
「カトーさんはさあ
トーコと俺のコト
聞いてるんでしょ?
もう先方には
伝えてくれてるの?」
「……」
「その様子だと
話、半分だけ伝えてるって
カンジだね」
「お嬢さまの耳には
入れない方が賢明かと…」
車の中での
セイとカトーさんの
会話が
アタマの中に
蘇ってくる。
…近親相姦。
この家の大スキャンダル。
血が繋がっていないとはいえ
戸籍上は姉弟のふたりが
愛し合うなんて
この家では
この島では
過去の古傷を
えぐり出すようなモノで。
しかも
親子二代続けてなんて
オゾマシイと言われても
仕方のないコトだった。
「…セイは
その話をどこで知ったの?」
「作品」
セイのパパは
自分の身の上を
小説にして
遺していたのだと言う。
「カノンくんから借りてた
あの小説?」