「読んだ後
焼き捨てちゃったけどね」
「……」
…そんなに
ショッキングな
内容だったんだろうか。
実妹を
レイプしようとした上
溺死しかけるなんて
エピソード。
いったいどういう風に
自分を振り返って
書き上げたと言うのか。
セイには悪いけど
やっぱり
マトモな感覚を持った
ヒトとは
思えない。
作家なんて
みんな多少はクレイジーな
モノかもしれないけれど
それにしたって
窃盗犯が出所して
牢屋の話を
面白おかしく書くのとは
ワケが違う。
だけど。
あの平和主義で善良な
やさしいパパとママの
親友なんだよね。
どこか不自然で
しっくりこない。
「……」
セイは
自分の父親が書いた言い訳を
どういう風に
受け取ったのか。
セイが私の胸の突起を
摘んで遊んでいるけれど
何だか
声も出なかった。
ちいさな溜息を
誤魔化すように
私は
セイにもたれるようにして
カラダを預ける。
「…また誰か
来るかもしれない」
セイが私の耳元で
囁いた。
「……」
セイは努めて
普段と変わらない自分を
演じているつもりかも
しれなかったけれど。