恩着せがましい
言い回しまで

オヤジっぽいん
ですけれどッ。


「どっちでも一緒じゃん」

セイは
上機嫌で私の襟元に

ちいさく
啄ばむようなキスをして。


「今夜が楽しみだな〜」


なんて

ひとりでさっさと風呂場を
後にしようとする。


「カトーの喪服
も一度借りてこようかなッ♪」


…オノレは
何を考えとるんじゃ。


「夜はお部屋
と〜ぜんッ、別々だからッ!」


「夜這いかけるのも
スリルがあって燃えるな〜♪」


脱衣場から
セイの鼻歌が聞こえてくるッ。


「カノンくんがきっと

セイのコト
離さないからッ」


私は
掃除道具を手早く片づけて
セイの後を追いかけた。


「じゃ、カノンにも
後学の為に
見学させてやるかッ」


脱衣場で
荷物をまとめながら

セイってば

うれしそおおおおおに
私を見る。


「…カノンくんはまだ
中学生ですッ」


「中学生なんて
一番、興味津々な
年頃じゃないか」


セイが
脱衣場の擦りガラスの扉を
開けた。


「なッ、カノン」


え?


女湯の暖簾の向こう

白い制服のズボンが
覗き見える。


セイが
暖簾を片手で上げると


不機嫌さ丸出しの
カノンくんが

女湯の前に立っていた。