「トーコ、メシだってさ。
早く来ないと
食いっぱぐれるぞ」
セイが苦笑しながら
こっちを見ててッ。
…誰が
風呂場を汚したんだ!!!
愚痴のひとつも
溢したくなるッ。
しかもッ!
チカラとヒマを持て余してる
いい若者がふたりもいて。
この重いカバンを
持ってやろうという
やさしい紳士はいないのかッ。
「トーコさん」
ココロの声が
聞き届けられたかと思って
「はいッ」
顔をあげると
そこには
カトーさんが立っていて。
…タバコくさいッ。
どこかで
一服してきたのだろうかッ。
「ご自宅から
お電話が入ってますよ」
「え」
ママッ!?
それともパパからッ!!!??
「でッ電話、どこですかッ」
いや〜ん。
離れて1日も経っては
いないのに
こんなにも声が
恋しいよおおおお。
私は
カトーさんの指さす方向に
駆け出そうとした。
「あッ、トーコさんッ!!!」
「はいッ?」
「荷物を
引きずらないように!!」
カトーさんが慌てて
私が持っていた荷物を
持ち上げる。
振り向けば
黒い廊下に
真新しい傷がくっきりと…。
「…カトーさん
見てしまいました?」
「…見てしまいました」
おおおおうッ。
何てミステイクッ。