「荷物は私がお部屋まで
お運びしておきますから
トーコさんはお電話の方へ」
って。
カトーさんが
私から
荷物を取り上げようとする。
ありがたい申し出では
あったけどッ。
「…もう隠したりは
しませんよね?」
念の為、確認する。
「長距離だから
こうしている間にも
電話代、かさみますよ」
なんて
カトーさんてば
余裕で笑っててッ。
何故、そんなコトはないと
断言してくれないんだあああ。
あう、あう、あうッ。
「大丈夫ですよ。
荷物はちゃんと
運んで置きますから」
…もしかして
からかわれてるのかッ。
オジサンのジョークは
よくわからんッ。
「盗まれないように
押し入れに入れて
おきましょうね」
あっはっは、って
私の荷物を持って立ち去る
カトーさんの背中を
私は冷やかに見送った。
…ここにくる車の中でも
真面目なフリして
からかってきてたしッ。
このオトコ、侮れないッ。
カトーさんが
指さした方向へと
私は廊下を小走りに急ぐ。
目の前の廊下に
真新しい傷が
向こうから一直線に
ついていて。
「…オジばあさんが
私の荷物を
引きずった痕かも」
…申し訳ないッ。