『ま、いいじゃないか』
そっちのトーコには
カンケイない話だから、って
何かすんごく
気になる言い方でッ。
『それより
セイのコトなんだけど』
セイがやたらと
明るいけれど
何かあったのか、って
パパがいきなり
核心をついてきた。
「…セイのパパと
パパの妹さんの溺死の話を
聞いたけど」
『妹さんが
溺死されたのか!?』
…自分の文章力の
不自由さに
ある種の才能を
見出してしまうッ。
「セイのパパが
その昔、溺死しかけた、話」
私は受話器を手で押さえて
ハッキリと発音する。
「妹さんとの一件で
勘当されたって聞いたよ」
『…誰から、その話を?』
「……」
セイから、って
言ってもいいモノだろうか。
私は一瞬、躊躇した。
『誰が言ってたかは
知らないが…』
そう前置きをすると
アイツは
言い訳しないヤツだったから
そっちでは
未だに誤解されたまま
なのかもしれないな、って
パパは溜息をついて。
『責任感のある
忍耐強いヤツだったからね』
…そんないいヒトだったんだ。
だけど
パパのいう人物像と
ここで受けた私の印象には
物凄い距離があって。
ますます
セイのパパのコトが
わからなくなる。
『信じてやって欲しい』