こうして
ひとり取り残されると

幽霊でも出てきそうだ。


「…取りあえず

カトーさんが
歩いていった方向へ
行ってみよう」

私は
余計なモノを見ないように

できるだけ
視界を
自分の足元に落しながら

廊下を
足早に進んでいった。


「あ」


廊下の角を曲ったトコロで

線香の匂いが
急に香ってきて

思わず足を止める。


「誰かが
お線香を上げているのかな」

とにかく
お線香の匂いがする部屋には
誰かいるには違いない。


くんくんくん。

私は鼻を利かせて

線香の香りの出ドコロを
手繰っていった。


「あれれ?」

…行き止まり?


格子の柵を覗き込むと

地下に続く
ちいさな階段がある。


真っ暗な階段の奥に
赤い光。


それが線香だと
すぐにわかった。


「…何だろう。
こんな場所に線香なんて」

よく目を凝らして見ると

階段のあちこちに
塩が盛ってあって。


…何だか
オカルトめいていて

気味が悪い。


「トーコさん?」


びくッ!


予想もしない方向から
いきなり声を掛けられて

心臓が止まるかと思ったッ。