カトーさんは
カノンママの後を
追っかけたっきり
結局、食事の席には
戻ってはこなくって。
「カトーさんも
お腹すいてるんじゃ
ないのかな…」
なんて
話題を変えたつもりが
セイの前で
言ってはいけないひと言を
口にしてしまっていたコトを
セイの冷やかな視線が
私に教えてくれている。
「カトーさんのラーメン
貰っちゃおうかッ」
私は
その場を取り繕うようにして
カトーさんのカップめんを
物色した。
「俺、トーコが食べたい〜」
…セイがまた
オヤジみたいなコトを言う。
「セイってさ。
日頃、オジサンとばっか
つき合ってるから
口にするコトバも
びみょ〜に古いんだよねッ」
私は苦笑しながら
セイの好きそうな
カップめんを選んで
封を開けた。
「成熟したオトナのオトコの
表現など
オコチャマなトーコには
わかるまい」
「トーコが食べたい〜」の
どこが
成熟したオトナのオトコの
表現なんだかッ。
私は
オコチャマのセイの為に
フォークを探す。
「…割り箸は
こんなにあるのに」
「トーコが
食べさせてくれれば
いいんじゃない?」
「……」
不器用ながらも
自分でお箸を持とうという
考えは
コヤツのアタマの中には
浮かばないのかッ。