カノンくんが
隣りの部屋に声を掛けると
フスマの向こう
年老いた女性が3人
控えていて。
奥からさらに
例のオジばあさんが
ナイフとフォークを持って
やってきた。
みんなとお揃いの
フリルの白いエプロンを
つけていて。
…オンナのヒトだったんだ。
オジばあさんは
すました顔で
カノンくんに
ナイフとフォークを
差し出して。
「はい。セイ先輩、どうぞ」
まるで
手術のメスを手渡すように
カノンくんが
セイの掌に乗せる。
「…ど〜も」
セイはタイの刺身を
ナイフとフォークで
解体し始めた。
「…変ったお作法ね」
カノンママは
セイの奇異な食べ方に
気分を悪くしたのか
ハンカチで
口元を押さえながら
「ごちそうさま」
ひとり退席をする。
「お嬢さま」
大丈夫ですか、と
カノンママの隣りに座っていた
カトーさんが
心配そうに
カノンママの
後を追っていって。
「……」
「……」
「…アイツら、デキてるな」
って。
セイがまた
不用意なひと言を口にした。