「ごめんね、カノンくんッ」
私は
セイのアタマを
押さえつけて
有無を言わせず
謝罪させるッ。
「構いませんよ」
みんな
口には出さないだけで
そう思ってますから、って
この中学生は
顔色ひとつ変えずにいて。
…かわいくないッ。
だけどッ
だからと言って
「カノンって
オヤジとは死別したの?
それとも生別?」
なんて
思いっきり
ヒトの家の事情に
立ち入ったコトを
聞いてるんじゃないッ。
私はセイの太股を
思いっきりツネった。
「痛ッ、何だよ!」
「何だよじゃ、ないッ」
たまには
空気を読んだら
どうだっつーのッ。
「僕には生まれたときから
父親なんていませんよ」
え。
「誰の子どもか
わからないので
戸籍の父親欄も
空欄になってますから」
カノンくんは
何でもないコトのように
平然と
ゴハンを口に運んでいてッ。
「……」
私達ッ
聞いてはいけないコトを
聞いてしまったような
気がしますッ。