「セイなんて
もう知らないんだからッ!!」
私は思わずそう叫んで
タバコ臭いその部屋を
飛び出していた。
冷たい木の廊下。
真っ暗な中
自分の部屋に
どうやって戻ったのかも
わからなかった。
女中部屋だったという
その部屋は
灯りも
点いたり、消えたりと
私にケンカを
売っているかのようでッ。
しかたなく
黄色い電気に切り替える。
「寒ッ」
私は
持ってきた靴下を
重ねて履いて
コートを羽織った。
カビ臭い布団を
自分で敷いて
布団の中に
服を着たまま潜り込む。
「…カギがついている
部屋だからって
布団くらい
客用のを用意してくれれば
よさそうなモノなのに」
カトーさんの気が
そこまで回らなかったのか
それとも
単なる挨拶代わりの
嫌がらせ
…なんだろうか。
「…もう、寝よ、寝よッ!」
明日の遺言状の公開に
同席し終えれば
この島とも
この家とも
オサラバだッ。
「このひと晩さえ
我慢すれば
家に帰れるんだしッ♪」
私は
いい方に考えて
眠りについた。
「……」
カタ、カタ、カタ、と
窓が風に叩かれては
自己主張している。
「…眠れない」