セイは
私の口を塞いだまま

私を抱きかかえるようにして
元来た通路を
階段近くまで引き返した。


「…あのふたりッ!!
あんなトコロで
いったい何してたのッ?」


セイの手から
解放された私の口が

堰を切ったように
疑問を投げかける。


「…逢引きじゃないの?」

「……」


セイのコトバの選び方は
やっぱりどこか古臭いッ。


だけど。

カノンママとカトーさん。

こんな夜更けに
ふたりっきりで
こんなトコロにいるなんて


「…冗談じゃなく
本当につき合ってるんだ」


「トーコの寝てる部屋で

ふたり仲良く
トーコのパンツと乳首隠しを
ディスプレイ
してたんだろうな」

あの
むっつりスケベ〜が、って。


「…セイのバカッ」

そんなトコ
想像したくもないッ。


「ほら、湯たんぽ
落っことすぞ」


セイの顔を
歪ませてやろうと
手を伸ばした私を

セイが自分の懐の中に
取り込んだ。


「…トーコは
あったかいな」

「……」


階段に腰掛けながら
セイが後ろから
私のアタマに

「ん〜」

キスをする。


「…言っときますけどッ。

私ッ、セイのコト
まだ怒ってるんからねッ」


「怒ってるって、何を?」

セイが私の頬に
自分の頬を寄せてきた。


「はいっし、どうどう!」

お馬のお稽古よッ、って


「いででででッ」

私にツネられて
セイが痛がりながら

…笑ってるッ。