「今回は許すけどッ。
もう2度と
他のヒトの前で
恥をかかせたら…!」
私が全部
言い切らないうちに
セイが私の唇を奪う。
「…かわいくて
かわいくて仕方ないんだ。
このまま抱きしめて
壊してしまいたいって
本気で思うときがある」
だから
「そんな約束なんて
できそうにない」
「……」
そんな風に言われたら…。
「セイ、あのね、私は…」
「…待った!」
セイが私のコトバを
また途中で遮った。
「灯りが消えた」
続きは後だ、って
セイが
私を階段から
立ち上がらせる。
「……」
カノンママとカトーさんの
気配が消えた暗い通路を
セイが私の手を取って
足早に進んでいった。
「線香を取り換えていった
みたいだな」
それは
蚊取り線香の親戚みたいな
妙な形の線香で
灰も殆んど落ちていない。
「あと12時間くらいは
持ちそうだな」
セイが
線香の灰を突っついて
母屋に続く
正面の階段を見上げた。
「…この階段から
俺のばあさまは
落っこちたんだ?」
夕方、通りがかったときには
母屋の廊下からでも
見えていたのに。
格子戸の向こう
木の扉が
外から閉められている。