「…こんなモノ
ただの子ども騙し
ですから」
思春期の子どもの
ただの憂さ晴らし。
「許してやってください」
カトーさんは
まるで
カノンくんの保護者みたいに
私達に
アタマを下げた。
「…行こう」
セイが
私の手を取って
元来た通路を歩き出す。
「もっと
おもしろいモノ
期待してたんだけどな〜」
オカルト好きなセイが
聞えよがしに
声を張り上げた。
「このおびただしい
御札も見かけ倒しか〜」
「ああ、これは
この島に伝わる
家内安全祈願の御札で…」
毎年、2月に
お寺で戴いてきては
貼り重ね続けているのだ
という。
「…家内安全、って」
思わず
ふたりの足も
止まってしまうッ。
「御札の貼る方角が
決まっていますからね」
どうしても
同じトコロに
重ね張りしてしまうコトに
なってしまって、って。
…田舎の慣習は
理解しがたいッ。
「トーコの部屋にも
あったけど?」
セイがゆっくり振り返った。
「…あれは昔
女中部屋に自分の夫が
忍び込んでいたと知った
当時の当主夫人が
イヤミを込めて
子宝祈願の御札を
貼りつけていったという
逸話が残ってます」