届かないココロ編
「以前、カノンに
ここに閉じ込められたヒトは
何時間くらい持ったの?」
「…通風口まで
閉じられたのは
今回が初めてですから」
セイの質問に
カトーさんは
戸惑いながら答えてる。
「じゃ、アイツも
どれくらいで
ここの空気がなくなるか
知らないんだ?」
…それは
私達を
ちょっと困らせてやろうとか
そういう次元なんかじゃなく
明らかにカノンくんは
殺意を持って
私達を
ここに閉じ込めて
いるんだってコトを
意味していて。
「……」
さすがに
カトーさんも複雑な顔をして
黙り込んでしまった。
「こんなコトなら
遺産相続なんて
さっさと放棄するんだったね」
パパ達は何を考えて
セイに簡単に返事をさせるな
なんて
私に頼んだんだろう。
自分達は親の遺産を
生前にもかかわらず
相続放棄なんかしちゃってる
クセに
セイの受け継ぐ遺産は
亡くなったセイの両親からの
セイへのプレゼントだとでも
思ったんだろうか。
「お金なんかで
命、落とすなんて
悔やんでも悔やみきれないよ」
今更、後悔したって
仕方ないのに
愚痴ばかりが
口をついて出てしまう。
「トーコ、おまえ
ホント、バカだな〜」
セイがカトーさんの手から
タバコを取り上げて
石壁に押し当てて
揉み消した。
「酸素を消費するモノは
排除させて貰いますから」