セイは線香に手を伸ばす。


「それは…!」

躊躇するカトーさんに


「自分達の生命が危ういのに
言い伝えも何もないでしょう」


セイの言葉使いが
ツンケンとしてきていて。


…冗談なんかじゃなく

リアルに死の危険が
迫ってるんだって


思い知らされた。


ポキッ。

セイの罰当たりな指が
線香の先を折る。


カトーさんが
その音に身を縮めた。


「…そもそも
遺産目的の殺人なら

カトーさんまで
捲き込む必要はない
だろうしね」


「カノンくんは
遺言状の場所を知っていて

カトーさんさえ
いなくなれば

遺言状を
破棄してしまえば、って
考えたとかッ!?」


我ながら
なかなかの推理だと
思ったのに。


「……」
「……」


「えッ、やだ。何ッ!?」

私に対する

可哀想な娘だと
言わんばかりの

その憐憫の眼差しはッ!!!!


「私の推理に
何か落ち度でもッ!?」


「…俺とトーコとカトーの3人が
ここに集うなんて

カノンに予想できたと思うか?」


「ぐッ」

確かにッ。


カトーさんはともかく

私とセイが
この地下室に入り込むなんて

カノンくんには予想も
つくワケもなく。


カノンが本当に
この地下室での殺人計画を
画策していたとしたら

「思わせぶりに
この地下室の存在を
俺の耳に
入れてきていたハズだろ」


…その通りで。


でも

だったら何で…。