「…ちいさい頃から
ご自分が愛されているって
実感がなかったから」


こうして
ヒトを
試しているでしょう、って

カトーさんは
苦笑してるけど。


「カトーさんは
カノンが
ほとぼりが冷めた頃に

扉を開けに来るんだと
信じてるんだ?」


セイが冷やかに
カトーさんに
視線を投げ掛ける。


「…悪い子じゃないんです」


母親もあの通り
個性的すぎて

「あの子に上手く
気持ちを伝えられずにいて…」


こうやって

お互いを困らせては

「許すという行為から
愛情を確認してきた
親子でしたから…」


カトーさんは
カノンくんを語るとき

やっぱり
やさしい目をしてて。


…さっさと
カノンママと結婚すれば
いいのにって

お節介な発想に
私は
アタマを占領された。


「あのオバサンの
薄〜〜〜い愛情じゃ

カノンだって
そりゃ、歪むわな」


「お嬢さまは
けっして冷たい方などでは
ありません!」


セイの挑発に
カトーさんは
簡単に乗ってきて。


思わず
私はセイと目を見合せて
苦笑する。


「明日、制服がないと
トーコさんが
困るんじゃないかって」


明日の準備で忙しいのに

「制服にご自分で
アイロンを掛けられて」


あの部屋は
寒いんじゃないかって

「湯たんぽを用意して」


起こさないように、って

そお〜っと
部屋を出てきたのだと

カトーさんが
カノンママをフォローした。