「下着を
ハンガーに掛けたりして
結構、シニカルなオンナだと
思うけどね」
「あれは!」
せっかく下着にも
完璧に掛けた
アイロンだったのに
「万が一、気がつかずに
踏みつけたり
しちゃったら、って
心配をしてらしたんですが」
カトー氏の
「大丈夫ですよ」のひと言が
適当にあしらわれたと
「お嬢さまの気に
障ったらしくって
あのような形に…」
申し訳ありません、と
カトーさんが
うな垂れた。
相手が今
どういう気持ちでいるか
どういう状況か
なんて、カンケイない。
いつだって
自分タイミングな
カノンくんのお母さん。
ちいさな子どもには
理解しづらいモノが
あっただろうな…。
「カノンの父親は
どうしたの?」
あのオバサンの
エキセントリックさに
耐えきれず
失踪でもしたのか、って
セイがカトーさんを
からかっているけれど。
…その目の奥は
笑ってなかった。
「カノンくんには
生まれた時から
お父さんがいなかったって
カノンくんが
言ってたでしょ!」
カトーさんに
挑発的な視線を送っていた
セイの顔を
私は
自分の方に向けさせるッ。
「案外、俺の父親が
カノンの父親だったりして」
「……」
セイは
私が一番聞きたくなかった
質問をしてしまった。
「…セイさまのお父さまは
お嬢さまの実の兄君ですよ」
カトーさんの
静かな微笑みが
ちょっとコワイ。
「でも風呂場で
あのオバサンをレイプしようと
してたんだろ?」