炎立つ感情編


セイのツッコミにも
カトーさんは
黙ったままだった。


石の壁。
石の床。

嫌な沈黙の中

カラダが
芯から冷えてくる。


「セイ、寒くない?」

私はセイのヒザから
カラダを起こして

自分のお腹に抱え込んでいた
湯たんぽを

ひとり薄着のセイの
腰と壁の隙間に
差し入れようとした。


なのに。

セイってば
カトーさんのヒザの上に
湯たんぽを乱暴に乗せて


「俺は
自分の、持ってるから」

なんて


アグラをかいた
自分のヒザの上に

湯たんぽ代わりに
私をやさしく導いた。


セイは私を背中から
抱きかかえるようにして

私の首筋や髪の毛に
キスを贈ってくる。


「あ、こらッ、セイ、ダメッ
やめなさいってばッ」


「……」

カトーさんが
気まずそうに

私達から顔を背けてて。


「トーコ、かわいい。
トーコ、だ〜い好き」


チュッ、チュクッ。


カトーさんに
聴こえよがしに

セイはわざと
キスの音をおおきく
立てているみたいだ。


石で囲まれた空間に
響き渡ってて

猛烈に恥ずかしいッ。


「もおおッ!!」


セイの顔と胸元を
突っぱねる。


あはははは、って

セイが楽しそうに
笑ってて。


「カトーさんも
その湯たんぽのぬくもりを
お嬢さまだと思って

温めて貰えば?」

なんて。

どうして真面目なオトナを
からかうんだかッ。