「…お嬢さまのココロは
坊ちゃまにあって」


カトーさんは

セイの前では

こんなにも正直に
自分の気持ちを
吐露しているのに


「私なんかが
お嬢さまを望むなんて
おこがましい」


自分の想いには
素直じゃなかった。


無意識に
タバコを口にしては

ポケットを探り出している。


「ライターなら預かってるよ」


セイがカトーさんの
ライターを
長い指でつまんで見せた。


セイってばいつの間にッ。


「ちょっとコレ、借りるから」


セイが階段を降りてきて

女中部屋への階段の方へ
歩いていく。


…まったくッ。


話を
自分からふっておいて

飽きたら終わり、なんて。


カトーさん

「ホント気まぐれなヤツで…」

ごめんなさいッ。


「トーコ〜。

こっち来て
ちょい、手伝え〜」


なんて

エラそうにッ。


暗闇の向こう

セイの手招きする腕だけが
壁から覗いてて

ちょっと
オカルト入ってますけれどッ。


…何か新しい退屈しのぎでも
思いついたのか。


「…いいけど」

脅かしたりしたら
コロスからねッ、って

先手を打っておいたのに。