贅沢なぬくもり編


「扉が燃えたくらいで
消火器なんぞ
持ち出してくるような
チキンなヤツに

そんな大それたコトが
できるワケないだろうが!」


笑わせるな、と
セイの声が地下室に響く。


「それでも
僕はやったんだ!!」


セイの胸に
食らいつくようにして
カノンくんは
セイの見解に猛反発して。


「カノンくんッ」

私は
セイとカノンくんの間に
割り入った。


「…怪我させたとか
言ってるけどさ」


ここで
おまえが悪さしてたのを

線香を変えにきた
ばあさまに
目撃されそうになって

「ばあさまを慌てて
引っ張ったかなんかして

せいぜい
尻もちをつかせちまった
ってトコじゃないの?」


セイのいい加減な推理に


「何を根拠に
そんなコト…ッ!」

カノンくんは
自尊心を
いたく傷つけられたのだろう。


私の肩に
その震えが伝わってきて…。


「セイッ
何でもかんでも
憶測でモノを言わないッ!」


このくらいの年頃の
オトコノコは
ワルに憧れたりするんだって
マンガで読んだコトがある。


事実であろうが
なかろうが

とにかく今は
この青少年を刺激しないのが
一番だと思うッ!!


「…何を根拠に、ね」


セイが思わせぶりに
ちょっと含み笑いをしたかと
思ったら

カノンくんと私を
階段の下に引っ張り込んで


ガガガガガッ。

火をつけた重い扉を閉めた。


「セイッ!?」