「この扉、凄い高価な一枚板で
出来てるんですよね?」
セイはカトーさんに
そう話しかけながら
床に燃え広がないように
扉の下方に貼りつけてあった
濡れた御札を
乱雑に剥がし出してッ。
まさかッ!!
「度胸試しとか言って
扉、全部焼き払っちゃう
つもりじゃないでしょうねッ」
私は
セイの手を止めようとして
セイに手首を
掴まれる。
「ここ、触ってみろよ」
「えッ」
「いいから!」
セイの行動が読めなくて
躊躇する私の指を
御札を剥がした跡に
触れさせた。
「!!!!?」
暗い場所
暗い色の扉。
全然
気がつきもしなかったけど
「これって…」
扉の下方
濡れた御札を貼りつけていた
部分には
びっしりと
何かで引っ掻いた痕がある。
「上から塗り消した跡が
あるけれど
触ると
【ぼくのおとうさま】って
書いてある」
セイがライターで
扉の傷を照らしながら
「…カノンがオトナを
何度かここに
閉じ込めたコトがあるって
言ってたけどさ。
閉じ込められたのは
カノンの母親と
カトーさん
アンタじゃないの?」
セイが階段の最上階から
カトーさんを見下ろした。
この書き込みに
気づいて欲しかった
肝心のふたりには
気づいて貰えず
皮肉なコトに
一番気づかれたくなかった
ばあさまに
見つかりそうになって
「つい、なんだろ?」
セイがわかった風な口を利く。