ダラけたセイを
引きずるように
大広間に連れていくと
「朝ゴハンなんか
みなさんとっくに
終えられましたよ」
って
おじばあさんに
サラリと宣告され。
空きっ腹のまま
私達は遺言執行の
奥の間に通された。
たくさんのオブザーバー。
みんな真黒なスーツを着ていて
いかにも仕事で来ましたと
言わんばかりの中
上座の上手にカノンくん。
その横にカノンママが
座ってて。
カノンくんの白い制服が
ひとり浮いている。
あのカノンくんが
ずっと俯いたまま
私達にも気づきもしない。
「……」
セイと思わず
顔を見合せてしまった。
セイが
カノンくんの隣りの座布団に
胡坐をかくようにして座ると
初めて気がついたかのように
カノンくんが
セイの顔をチラリと見て。
そのまま黙って
またうな垂れている。
「……」
遺言執行を見守りにきた
ヒト達の目が痛くって
とてもじゃないけれど
カノンくんに声を掛けられる
雰囲気ではなくて。
何かお互い
凄く気まずい。
こんなコトなら
ちゃんと朝食の席に
顔を出しておくんだったと
後悔した。
私達が席に着いたのを
見計らうように
カトーさんが
ハサミと封書を乗せた
漆器を持って入室してきて
遺言状が開封され
読み上げられ
遺言の中身に
みんなのどよめきが起こった。