「かもね」

セイが目を閉じたまま

また笑った。


「…なんか
眠たくなってくる」


長いまつ毛。

創りモノみたいに
精巧にできたセイの顔を

この隙にと
鑑賞してしまっている
自分がいる。


「…帰りの船の時間まで
少し眠ればいいよ」


私は
セイの無防備な
耳元の髪を撫でつけた。


…静かな冬の森。


みんな

やっと安らかな眠りにつける。


やがて
ちいさな寝息を立て始めた
セイを見守りながら

私は荷物の中から
カノンくんに貰った
セイのパパの小説を
取り出した。


「…読書って苦手なんだけど」


こんな場所で
ケータイゲームで
時間潰しというのも

カッコ悪い気がする。


ぱらぱらぱら、と
その小説を斜め読みして


「…もしかして
この小説って」


ところどころに
添えられた挿絵の

えげつないくらいの
濃厚な男女の絡み具合に


「官能小説…」


オトナの
エッチな読み物なんだって

さすがの私にも
理解できた。