カノンくんが
イッキに
思いの丈を吐き出して
泣き崩れる。
…細い肩。
階段の端っこに
ちいさくなって
どんなに生意気なコト
言ってても
まだ中学生の
子どもなんだよね。
なのに
「…甘えてんじゃね〜よッ!」
足元にしゃがみ込んでいた
カノンくんの肩を
ぐりぐり、と
セイが足の裏で
追い打ちを掛けるように
甚振っててッ。
セイのバカはッ
情けと言うコトバを
知らんのかあああッ!!
「セイ、アンタね…ッ!」
私が
セイを叱りつけるより先に
カトーさんが
カノンくんを
抱きしめるようにして
庇っていて
…驚いた。
でも、驚いたのは
私より
カノンくんの方で。
カトーさんの予期せぬ行為に
一瞬固まったかと思ったら
「…カトー!
おまえも、おまえだッ!」
いくら遺言だからって
こんなヤツを島に呼んで
「いったいおまえは
誰の味方なんだああ…!」
カノンくんが興奮して
カトーさんの胸から
逃れようとする。
「私はこの家に
お仕えする身。
遺言執行は
大事なお役目です」
そう言い切っておいて
それでも
カトーさんの腕は
カノンくんを
決して離そうとはしなかった。
セイも容赦なく
カトーさんの首元を
足でなぶり続けて。
「…離せ、離せ
離せええええええッ!」
カノンくんが激高する。
「セイッ!
もういい加減にしなさいッ」
私はカラダを張って
必死になって
セイを壁際に追い詰めた。