「抵抗しない相手に
暴力なんて最低だよッ!!」

私はセイに抱きついて。


「…ふんッ」


セイが
私の肩を抱きかかえるように
片手で握り込む。


「…自分の父親が
こうやって足蹴にされてるの

見てるのって屈辱だよな」


セイがカノンくんを
見下ろして

また挑発してるけど。


…カノンくんは
カトーさんが
お父さんだってコト…。

私はそっと
カノンくんの反応を確認した。


「…カトーさんさあ。

カノンはさ。
ずっと扉の外に張りついて
聞き耳を立てて

俺達の話を
聞いていたんだよね」


扉を叩いたとき
1回目と2回目の
音が違っていた、って。


セイは
カノンくんが扉の向こうから
中の様子を窺ってたの
ずっと気づいてて

わざと
カトーさんを挑発したり

火を点けたりも
全て計算づくだったんだ…!


呆れると言うか
何と言うか…。


「父親だって
認めてただろ?」


「……」

「ここまできて
まだ事実から逃げるのかよ?」


親子揃って
どうしようもない
チキンだな、って

セイの挑発にも

カトーさんは今度ばかりは
乗せられなかった。


「…アナタは
亡くなられた坊ちゃまに
とてもよく似てらっしゃる」


容姿は全然違うけど

話り口調に声。


「薄暗がりの中
アナタにではなく

坊ちゃまに
懺悔している気分でした」


冗談好きで
華やかなヒト。


「ご本人は
全くモテナイと
謙遜されてましたけど」