乱れ咲き♂001
「どうしてトーコまで
うたた寝なんか
してるんだよッ」
セイのおばあさまの島から
帰路につく電車の中で
不覚にも私もセイも
ぐっすりと眠りこけて
しまっていて。
「なあにが
ひと駅前で起こすから
セイは寝てても大丈夫
だッ!」
「…だって」
セイがあんまり
気持ちよさそうに
寝てたもんで
ついつられて
眠くなっちゃった、なんて
セイの眉間に
くっきりと現れていた
シワを見たら
とてもじゃないけど
恐くて
言い訳なんかできない。
ただでさえ
セイの寝起きの機嫌の悪さは
特筆モノだッ。
ぐだぐだとしつこく愚痴る
セイの後ろを
私はへらへらしながら
とっとこ歩いていた。
なのに。
「何だ、これはッ」
あともう少しで
マンションというトコロで
コトもあろうか
道路工事ッ。
ただでさえ
私達は
ドロドロに疲れまくっている。
しかも
何だかんだと
たくさんの
島のお土産を持たされていて。
マンションは
目の前だというのに
ここからおおきく迂回して
まだ歩かないと
いけないのかと思ったら
セイじゃないけど
私だって愚痴のひとつも
言いたくなった。
「荷物、重〜い」
「足、疲れた〜」
セイに聞こえないように
ちいさな声で呟いた
つもりだったのに。
「…そんなに疲れたんなら
ちょっと休んでいくか?」
突然、セイが立ち止まったり
するモノだから
セイの背中に
アタマをぶつけて
思いっきり尻もちを
ついてしまうッ。
「やだ〜ッ」
雨上がりの道。
お尻がぐっしょり濡れて。
「ば〜か」
セイが横目で
冷やかに私を見ながら
タコ焼き屋さんで
タコ焼きを1船注文した。
「やっぱ、お腹
空いてたんじゃないッ!」