駅弁
セイの嫌いなモノばっかりで
殆ど口にしてなかった。


濡れついでの、汚れついで。

汚いガードレールに
腰掛けながら

タコ焼きが盛られるのを待つ。


…高い腰の位置。

広い肩。


後姿も、やっぱカッコイイ。


なんて。

見慣れているハズなのに
見飽きるコトのない

その美神。


船盛りされた
タコ焼きという名の
庶民の食べ物を

長〜い腕で

「ほい。
トーコは、タコ担当ね」

差し出してきた。


「…タコ、嫌いなら
タコ焼き
食べなきゃいいのに」


「ゴムみたいな触感が
許せないだけで

ダシとしての存在は
認めてやってるつもりだ」


私は
ヘ理屈の塊の小悪魔の為に

タコ焼きから
せっせとタコを抜く。


セイは
コリっとしたモノや
硬い食べ物を
昔から嫌っていて

柔らかいモノとか
とろけるモノしか
食べないから

アゴが発達せずに

いつまでも
オンナノコみたいな輪郭を
しているんだと思う。


「はいッ。
王様、どうぞ召し上がれッ」


2本刺さっていた
爪楊枝の1本を
タコ抜きのタコ焼きに刺して
セイに渡した。


「爪楊枝は2本でワンセット。
1本だと安定しないだろうが」


…どこまでも
この王様は理屈っぽいッ。


「タコは1本で充分だからッ」

「おまえは、自分さえよければ
いいのかッ!?」


…それは
こっちのセリフだいッ。