セイが明るい声で
玄関のドアを開けて
いつもの
”いい子バージョン”の顔が
現れる。
「遅かったのね〜」
ママが早速
玄関まで迎えに出てくれた。
「まあ、セイにばっかり
荷物持たせてッ」
誤解だッ!!!!!
「マンションの下までは
私が持って…うぐッ」
セイに手で口を塞がれて。
「母さん
俺、風呂に入りたい」
「あ、そうね
すぐ沸かし直すわ」
ママは私の事情説明を
聞きもせず
バスルームへと
足取りも軽く向かっていった。
「セイッ、アンタねえッ!」
「…誰かきてる」
「えッ?」
私の口から離した手を
足元に向け
セイはそれを指さした。
「子どものくつ!?」
カブトムシの絵がついた
いかついデザイン。
幼稚園児くらいの
オトコノコの、だろうか。
【我が家で預かってます】
の張り紙が
アタマの中に蘇ってきて
「まさか、な」
セイとふたり
顔を見合せて苦笑する。
…セイが
子どもが苦手だって
ママは知らないのかな。
セイはママ達の前では
”いい子ちゃん”だから
考えられなくもないけれど。
私は
靴を脱ぎ散らかすようにして
リビングに駆けつけた。
「あれ?」
誰もいない?