乱れ咲き♂002
「かわいい寝顔だね」
会社から帰宅したパパが
セイの部屋で爆睡している
野生の少女の顔を
満面の笑みで
覗き込んでいる。
パパは
子どもが大好きだから
この我が家の緊急事態にも
ママとふたり
のん気に構えててッ。
「ところでセイは?」
「…この子のママが
入院していると思われる
病院を尋ねに行ってる」
「入院してると
”思われる”?」
「……」
…そうなのだ。
ママってば
信じられないコトに
救急車で連れていかれた
病院の名前も場所も
うる覚えでッ。
「だって、この子が
眠たそうだったんだもの」
…病院前から
タクシーに乗って
帰ってきたという。
幼稚園とも
連絡が取れないし。
消防署で訪ねても
何故か教えて貰えずに
「どういう続柄ですか」って
反対に
こっちがいろいろ
質問されて。
「…何かおかしいな」
結局、消防署の対応に
不自然さを感じたセイが
ネットで救急病院を
いくつかピックアップして
直接、病院に乗り込んで
探し当てるコトに
なったんだけど。
「電話で尋ねて
教えて貰えなかったモノを
直接行って
教えて貰えるモノかなあ」
…パパは
セイの狡猾さを
知らないからッ。
セイのコトだ。
自分の容姿と演技力に
モノを言わせて
きっとつつがなく
任務を遂行して帰ってくるに
決まっている。