「おにいちゃん
早く帰ってくると
いいでちゅね〜♪」

パパが
野生の少女のホッペタを
親指で軽く捏ねて


「ね〜。
この子のホッペ
気持ちいいでしょ〜♪」


なんて

ママとふたり
盛り上がってるッ。


「どれ、もう1回♪」

「パパッ、起きちゃうからッ」


私はセイの部屋から
脳天気な夫婦を追い出した。


…たくッ。

娘と息子がこんなにも
心配しているというのに。


「セイを待ってたら
夜遅くになっちゃうから
先にゴハンにしましょうか♪」

なんて。


ママは
自分の置かれている立場を
わかっているのか…。


「おお、これはまた
かわいく出来たね!」

パパが
食卓に出された
ママ特製のお子様ランチに
感激する。


「…何も私達の分まで
旗を立てなくったって」


ママらしいと言えば
ママらしいけど。


しかも、よく見ると

華やかにキュートに彩られた
お皿の上は

冷凍食品の盛り合わせ…。


…どこに
力を入れてるんだかッ。

ケチャップライスには
セイが苦手な
グリーンピースに
ニンジンに。

帰ってきたら
きっとセイの眉毛が
ピクって引きつると思うぞッ。


インスタントの
コーンスープを
すすりながら

私は悪い想像ばかりを
働かせてしまっていた。


「…そのスープ、旨いか?」

「!!!???」