水浸しになった
洗面台を拭いていると
痛い程
背中に視線を感じて
鏡に目をやるとと
セイが
ドアに寄り掛かるようにして
こっちを見ていた。
「…何か用?」
「シャワー浴びようかと
思ってさ」
「そう…」
セイはいつまで
この浮かれた陽気な仮面を
つけているつもり
なんだろうか…。
私はセイに場所を譲って
洗面所を
後にしようとして
セイの長い手に
通せんぼされる。
「ずいぶん
あのガキに親切じゃないか」
「…ちっちゃい子だもんッ」
当たり前じゃない。
「あのガキに気に入られて
あわよくば
ジュンイチ・ヒメミヤと
お近づきになろうかとか
思ってるワケ?」
セイの発想は
どこまで嫉妬深いんだろうッ。
「奥さんに子どもも
いるヒトなのにッ」
「奥さんは
事故で意識不明の重体だしね」
って
「あの子のママ
そんなに酷い状態なのッ!?」
「ってゆ〜か。
ジュンイチ・ヒメミヤって
殺人予告みたいなの
ネットで流されてたみたい」
ボディーガードつけて
海外出張に出た途端
妻と娘が代わりに
襲われて。
「病院に行ったら
私服警察官だらけでさ」
物々しい雰囲気だったと
セイは言う。
「…そんな中
子どもを
連れてきちゃったりしたら」
ウチが犯人かと
疑われるじゃないかッ!!!