…たぶん。

ここは
笑うトコロだったのだと思う。


笑い飛ばさねば
シャレにならない状況だと
わかってはいた。


でも。

笑えないッ。

あの美しいセイの顔が
無残にも歪められ…。


「…何だよ。

その同情いっぱいの目はッ」


あのセイが
真っ赤になって

自分の顔に貼りつけられた
セロハンテープを

ピピピ、と
乱暴に剥がし出す。


「…顔さえ合わさなければ
いいんだろッ」


セイは自分の部屋に入って

カチャ!

カギを閉めてしまった。


「セイは
どうしちゃったのかしら」


…ママ。

どこまでも鈍感で
ちょっとだけ羨ましいぞッ。


「ゴハン
お部屋に運んだ方が
いいのかしら」

「家に帰ってくる前に
タコ焼き食べてたから…」


だけど。

「セイ。あの子の家族に
会えなかったのかな」


「そうよねえ。

何かママ
心配になってきちゃった」


「セイ、セイ」って

ママがしつこく
セイの部屋のドアを
ノックして


「どうしたッ」

野生の少女が
こっちに向って歩いてくるッ。


カチャ。

「セイッ、今ドアを開けちゃ
ダメええええええッ」