「…カッコイイッ」
「セイってばッ」
そんな子ども相手に
よくもまあ
そんな白々しいコトをッ…!
「ほら歯磨き、いこっか
え〜っと…それで名前は」
「ダケンッ」
えッ。
「今日から俺はダケンだッ」
みんな、ダケンって呼べッ
って
少女が高らかに
ミナノモノにお触れを出した…。
…セイいいい〜〜〜ッ。
私の投げかけるキツイ視線を
軽〜く無視して
我関せずとばかりに
お貴族さまは優雅に
タコさんウィンナーを
口に運んでいてッ。
「まあ。じゃあ、これからは
ケンちゃんって
呼びましょうね」
「おうッ」
なんてッ。
「ママッ
ワルノリしすぎッ」
私は少女の手を引っ張って
強引に洗面所に連れ込んだッ。
「あ〜ん、して」
私はオトナ用の歯ブラシで
ちいさな口の中を
丁寧にブラッシングする。
…頑丈そうな歯。
何か人間じゃなくて
飼い犬の歯でも
手入れしてやっている
気がした。
「はい、くちゅくちゅ、して」
「ぼおうッ」
口からあぶくを出しながら
従順に私に従ってるけれど。
…ママが目の前で
事故に遭って
知らない家で
不安じゃないのかな。
私から差し出されたタオルで
タオルではなく
顔の方を左右に振って
口を拭って
野性児は
たったか、と
リビングに戻っていく。