乱れ咲き♂011


パパの会社まで
家から電車を乗り継いで
45分少々。

夕方前の
一番電車の本数が少ない
時間帯。


乗り継ぎの間の悪さも
手伝って

パパの会社に
辿り着いたのは

1時間以上経っての
コトだった。


いつもパパと
待ち合せるのは、駅前で。


パパの会社に来るなんて
初めてだ。


「何か
想像していたのと違う…」


パパの会社が
入っているオフィスビル。

ピッカピカの

この辺りでも
1,2の背高、高層で。


パパの会社

見栄張り過ぎッ。


「どんな超一流の会社かと
思うよねッ」

息巻く私に


「一流、でしょ」

セイがクールに答えた。


自分の父親を

よくもまあ
過小評価できるモノだ、って

セイってば
つかつかとビルの中に
歩みを進めていく。


「だってッ!

パパの会社の名前
クラスの誰も知らないしッ」


「外資、だからだろ。

欧米じゃ
ちょっとは名の知れた
会社だけどね」


セイはビルの中

迷いもせず
エレベーターに向う。


「だったら

どうして
ウチは貧乏なのよッ」


なのよ、なのよ、なのよ…。


別に私の声が

ヤマビコしていたワケでも
なかったけれど。


高い青空の見える天井。

私の声だけが
やたらと余韻を残して

甲高く響き渡った。