エグゼクティブっぽい
サラリーマン達の
失笑が恥ずかしい。
何も聞かなかったフリをして
セイがひとりで
エレベーターに
乗り込もうとしていてッ。
「ええいッ。
他人のフリを
してるんじゃないッ」
私は強引に
エレベーターに乗り込んだ。
「…どうして、おまえは
閉まりかけた
エレベーターにばかり
乗りたがるんだ?」
「セイが急いで
閉めるからでしょッ」
外から丸見えになっている
ガラス張りの
エレベーターの中
ふたり、もめる。
「言っておくが
おおきな会社で
働いているからって
高収入だとは限らない」
確かに
福利厚生とかは
充実していたりするけれど
「外資系企業なんて
成果主義」
結果を出した人間には
たっぷりの収入が
保証されるけど
結果を出せない人間には
厳しいんだ、って
私に背中を向けていた
セイの真面目な顔が
ガラスに映った。
「…パパって
お人よしだから、ね」
競争社会には
不向きなタイプだ。
「トーコの分際で
わかったような口を
利いてるんじゃない」
セイが振り向きながら
私のオデコを指で小突いて
初めて笑う。